「元気なときしか遺言書はつくれない!?」認知症になる前に遺言書を用意しよう

公開日:2020.11.10 更新日:2021.01.03

認知症でも遺言はできる?


「認知症=遺言能力(遺言を有効に作成することができる能力)がない」ということではありません。

境界線がはっきり分かれているというよりは、状況によって判断基準が変わることが多いのです。

認知症の診断を受けていても、遺言の有効性が認められた裁判例はあります。

しかし、後日の紛争リスクを回避するためにも、遺言能力の有無については慎重に判断する必要があります。


遺言は誰でもできるのか


「遺言内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足る意思能力」のことを、法律の世界では、遺言能力といいます。

遺言をするときに、しっかりと自らが行う遺言の内容を理解し、その遺言を行った結果どのような効力が生じるのかという点を理解する力がないと、遺言は「有効なもの」とはなりません。

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未成年者の場合


遺言は、代理で行うことができません。親などの親権者が代理することもできません。

一方で遺言には、未成年者などの行為能力制度の適用もありません。
そこで民法は、「15歳に達した者は、遺言をすることができる」としています。

そのため、15歳未満の場合は、親の同意があろうがなかろうが、遺言はできません(遺言を作っても無効です)。
15歳に達した者は、親の同意があろうがなかろうが遺言はできます。

ただし、15歳以上でも、認知症やその他精神疾患により意思能力がないとされた場合には、遺言能力はなしとされるので注意が必要です。


高齢者などの場合


医師から、認知症や認知症の疑いがあると診断されている場合は、遺言能力(意思能力)がなく、無効となる可能性がります。

意思能力がないと疑われる場合には、遺言者が成年被後見人となっているケースもあります。一方で遺言は代理で行うことができないので、後見人が代わりに行うということはできません。

すなわち、遺言者が成年被後見人となっている遺言は無効になります。

認知症の疑いがある場合は、2名以上の医師が立ち会い、一時的に意思能力が回復し、遺言能力があることを、医師たちに証明してもらわなければなりません。

ただし、遺言作成時に証明ができたとしても、相続発生後に遺言の有効性について争われるリスクもありますので、慎重に判断する必要があります。


遺言能力(意思能力)の有無を判断するには


「遺言」にまつわる過去の裁判例では、下記3つの要素から遺言能力(意思能力)の有無を判断しています。
①精神医学的観点 
②遺言内容の複雑性 
③遺言の動機、理由、遺言者と相続人・受遺者との人的関係


①精神医学的観点


意思能力は判断能力の問題なので、遺言時の遺言者の状態がどのような状態にあるのかという点が重要です。

医師の診断書などがあれば、その状態を表すものとして非常に有効です。

ただし、実務上は必ずしも適切な診断書を得ることができるわけではありません。
そのような場合は一つの基準として、「長谷川式簡易知能評価スケール」が利用されるケースが多いです。

なお、「認知症」=「意思能力がない」ということではなく、総合的な判断となります。    


②遺言内容の複雑性


裁判例などでも考慮されているものとして、遺言内容がどのようなものだったかという点があります。

意思能力とはつまり、遺言の内容や効果を理解した上で意思決定できているのか?という点がポイントなのです。

遺言といっても内容はさまざま。
単純な内容の遺言なら理解しやすく、複雑な内容の遺言は理解しにくい。

そのため、単純な内容のほうが、「意思能力があった」とされやすくなります。

例えば、「A銀行預貯金は甲に、B銀行預貯金は乙に、自宅は丙に…」という遺言に比べれば、「財産の全てを○○にあげる」という内容のもののほうが意味を理解しやすいはずです。


③遺言の動機、理由、遺言者と相続人、受遺者との人的関係


遺言の動機や理由、遺言者と相続人・受遺者との人的関係については、遺言書の内容には現れません。

ですが、あらゆる諸事情を考慮して、遺言者の意思として「普通である」「合理性がある」という内容のものであれば、遺言者しっかりと判断したということで、意思能力はあると捉えられるケースは多くあります。

分かりやすい事例

  • 背景:
    遺言者に配偶者・子どもはおらず、妹と弟がおり、妹はとてもよく介護などをしてくれたのに対して、弟とは仲が悪く、10年以上連絡すら取っていないという事情があった

    遺言内容:
    「財産を妹にあげる」という決断をした

    遺言能力に関する考察:
    遺言者は合理性をもってきちんと判断できたという根拠が明確です。そのため、遺言者には「意思能力があった」という方向に働きやすくなります。




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